相続税対策(基礎編)…その4

10  小規模宅地評価減の有効活用 

 

 @相続税対策としての評価特例の活用 

 

 相続税対策を行うに際しては、最初に現状認識として財産の把握および評価、税額試算や納税資金の検証等についての作業を行います。その作業過程の中でしばしば、所有資産が有効活用されていない例が見られます。 

 例えば、固定資産税負担の高い土地が更地であったり、地積が広く固定資産税の負担が高い土地が貸地であるなど、安易に前回の相続で不動産を共有相続したために今後の相続対策がスムーズに進まないケースがあります。 

 上記の例で固定資産税負担の高い更地については、事業用建物、賃貸用マンション等を建築することにより、ケースによっては一定の面積まで相続税評価額の50%または80%の評価減額が可能となり相続税対・策として有効です。?? ?r??

 

 A特例の内容 

 

 相続または遺贈によって取得した財産のうちに、被相続人等の事業の用もしくは居住の用に供されていた宅地等で建物や構築物の敷地に供されているもの、または国の事業の用に供されている宅地等で建物の敷地の用に供されているものがある場合には、相続人等が取得したこれらの宅地等のうち限度面種までの部分(小規模宅地という)について50%または80%の評価減額ができます。 

 主な例として次のものがあります。

 

被相続人の居住の用に供されていた宅地等で、 その宅地等を配偶者が取得するか被相続人と 同居していた相続人が相続税の申告期限まで に取得し、かつ、申告期限まで保有する場合。   相続人の住居用 ??

                            ↓

                     被相続人が保管

  上記用件を満たす場合、240までについて80%の減額

計 ●減額前宅地評価額     120,000,000円 面積300u

算 ●小規模宅地の評価減額  120,000,000円×240u/300

例                    80%=76,800,000

  ●減額後の評価額  120,000,000円-76,800,000円=43,200,000円

被相続人が貸家を経営していて、その賃貸建 物の宅地等を相続人等が取得した場合。                             賃貸用建物 ?r??

                      ↓

                     被相続人が保有

  上記用件を満たす場合、200までについて50%の減額  

計 ●減額前宅地評価額    84,000,000  面積380u

算 ●小規模宅地の評価減額  84,000,000円×200u/380

例                            50%=30,000,000

  ●減額後の評価額  84,000,000-30,000,000=54,000,000

被相続人が不動産賃貸業以外の事業(例えば ビジネスホテル経営)をしていて、その宅地 等を申告期限までに取得し、かつ、申告期 限までに事業を継承し、申告期限まで保有 する場合。                                    ホテル営業 ?z?e??

                       ↓

                     被相続人が保有

  上記用件を満たす場合、400までについて80%の減額 

計 ●減額前宅地評価額     200,000,000円 面積500u 

算  ●小規模宅地の評価減額  200,000,000円×400u/500u

例                    80%=128,000,000

  ●減額後の評価額  200,000,000-128,000,000=72,000,000

  

 B小規模宅地の特例適用にあたっての留意点 

 

 小規模宅地の特例を利用する場合には、いくつかの留意点があります。 

 主な留意点としては次のようなものがあります 

 T「争族」により相続税申告期限までに分割されない場合には特例適用ができません。その場合にはとりあえず、「申告期限後3年以内の分割見込書」を税務署に提出する必要があります。この手続きにより3年以内に分割された場合には、小規模宅地評価減の特例適用が可能となります。 

 U原則的には特例適用対象土地が複数ある場合には、評価減額前の宅地、1uあたりの単価に減額割合(80%もしくは50%)を乗じた額で最も高いものから適用することにより税効果が最大となります。 

 V特例申請にあたっては添付資料が必要となります。 

 W月極駐車場等については、フェンスやアスファルト敷などの構築物がないと特例適用ができないため、このような場合には、相続開始前に事前整備する必要があります。 

 X小規模宅地の特例の態様は非常に多く、その適用および相続税対策においては専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。 

相続税対策(基礎編)…その3

9  相続時精算課税制度の有効活用 

 

 @適用要件

 相続時精算課税制度は、贈与をする年の1月1日において65歳以上である者(以下「特定贈与者」という)から、贈与者の推定相続人である直系卑属のうち、贈与を受ける年の1月1日において20歳以上の者(以下「精算課税適用者」という)に贈与を行った場合に適用が可能となります(なお、住宅取得等資金の場合贈与者には年齢の制限はありません)。

 相続時精算課税制度の適用を受けようとする精算課税適用者は、贈与を受けた財産に係る贈与税の申告期限内に「相続時精算課税選択届出書」等を贈与税の申告書に添付し、贈与税の納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。

 この「相続時精算課税選択届出書」を提出した場合には、その届出書に記載した特定贈与者からの贈与により取得する財産については、この制度を適用した年分以降、全て相続時精算課税が適用されることとなります。なお、いったん提出された「相続時精算課税選択届出書」は撤回することはできませんので注意が必要です。

 

 贈 与 ?????? → 相続時精算課税選択届出書」

           「相続時精算課税に係る財産を

           贈与した旨の確認書」の提出

     
  A基本的な仕組み

 

 T 財産の贈与時 

 

 相続時精算課税制度は、贈与する財産の種類に制限はなく、金額の上限も設けられていません。また、贈与の回数にも制限が設けられていませんので、一括あるいは数年間にわたる贈与も可能となります。ただし、無税での移転ができる金額は2,500万円(住宅取得等資金の場合には3,500万円) の制限があり、この金額を超えた部分については一律で20%の贈与税が課税されます。

 相続時精算課税制度に係る贈与税額の計算

   (贈与税の課税価格−特別控除額※)×20%=贈与税額 

             ※特別控除額は以下の金額のうちいずれか少ない金額となります 

・2,500万円(既にこの規定の適用を受けて控除した金額がある場合には、その金額を控除した残額) 

・特定贈与者ごとの贈与税の課税価格 

 

 U 相続発生時

 

 特定贈与者から相続または遺贈により財産を取得した精算課税適用者の相続税の計算については、相続時精算課税制度を選択した年分以後の年に特定贈与者から贈与を受けた財産の「贈与時における価額」と相続財産の価額を合算した価額を相続税の課税価格とし、現行の課税方式により計算した相続税額から、相続時精算課税制度における 贈与税の税額に相当する金額を控除します。

 その際、相続税額から控除しきれない贈与 税の税額に相当する金額については、還付を受けることができます。

 ??ホ???? 控除  

     相続税額
  

 B自社株の場合の相続時精算課税制度適用上の留意事項 

                      (評価額の増減の考慮)

 相続時精算課税制度を活用した場合、2,500万円までであれば贈与税の負担なく自社 株を後継者に移転させることができるため、経営権を後継者にバトンタッチできます。

 ただし、相続時精算課税制度を適用した場合には、前述したように、相続税の課税価格を算出する際に、相続時精算課税制度を適用したことにより贈与税の課税価格に算入された価額を合算することとなり、その際に合算される贈与財.産の価額は、「贈与時点における課税価格に算入された価額」となるので留意が必要です。 

 非上場株式の相続税または贈与税の課税価格の計算は財産評価基本通達に基づいて評価が行われ、評価額は会社の業績・規模・類似業種の平均株価等の変動や、財産評価基本通達の改正等により大きく変動するのが通常です。そのため、自社株の評価額が上昇し、相続時点の評価額が贈与時点の評価額よりも高い場合でもその差額分は相続税の課税対象とはならないため有利になります。 

 一方、自社株の評価額が下落し、相続時点の評価額の方が贈与時点の評価額よりも低い場合には、その差額分だけ相続税の課税対象が増えることとなり不利になってしまいます。このような場合には、税務上の取扱いだけを考慮すれば、そもそも相続時精算課税制度を利用しなければ良かったということになってしまいます。 

 相続時精算課税適用者が贈与後において経営成績を上昇させることを期待するような、一種のストックオプション的な考え方もありますが、自社株の相続時精算課税制度の適用にあたっては評価会社の状況等を見極めて慎重な判断が必要となります。 

相続税対策(基礎編)…その2

8  養子縁組の活用   

 

 @養子縁組による税効果  

 養子縁組を行うことにより法定相続人が増加します。このことにより、相続税の基礎控除額の増加、相続税総額計算への影響、生命保険金等や退職手当金等の非課税限度額の計算において税効果が得られます。 

 なお被相続人の孫が養子縁組により相続人となって相続財産を取得した場合には、想 続税額にその相続税額の20%相当額が加算されます。

 

 A養子の相続税法上の取扱い

 民法上養子縁組により養子は縁組の日から養親の相続権を有することになりますが、従前養子縁組による租税回避行為が多かったため相続税法上、法定相続人の数に次のような制限が設けられています。

 

(1)

被相続人に実子がある場合   1人
 (2) 
被相続人に実子がなく、養子の数が1人である場合 1人
 (3)
被相続人に実子がなく、養子の数が2人以上である場合  2人