相続税対策(応用編)…その4

15  多額の繰越欠損金がある会社を利用する 

 

 @繰越欠損金の活用 

 法人が財産の贈与を受けた場合には、その財産の贈与時の時価相当額につき受贈益として法人税が課税されます。ただし、税務上の繰越欠損金がある法人についてはその繰越欠損金の範囲までは課税されません。

  

 A貸付金の債務免除 

 債務超過会社の場合、会社の財政状態が悪化しているケースが多く、社長が法人に対し多額の貸付けを行っていることが考えられます。当然その貸付金も社長自身の財産となりますから、相続が発生した場合には相続税の課税対象となります。回収が期待できるものなら良いのですが、できないものについては、生前に債権の放棄等をしなければ、資金の回収もできない上に相続税まで課税されてしまいます。 

 債権の放棄をした場合、会社側では同額の債務免除益が計上され法人税の課税対象となりますが、これも繰越欠損金の範囲内であれば債務免除益と繰越欠損金が相殺されて法人税は課税されないことになります。 

 ただし、同族会社が多額の債務免除を受ける場合には留保金課税が発生する可能性がありますので、事業年度ごとに計画的に債務免除をするなどの注意が必要となります。というのも、留保金課税の計算上その基礎となる課税留保金額は繰越欠損金控除前の金額となりますので、多額の債務免除益と繰越欠損金とが相殺できたとしても、留保金課税が発生する場合があるからです。 

 また、同族会社に債務免除した結果、株主の株の評価額が増加した場合、その増加した分について債務免除をした者から各株主に対してみなし贈与という問題が生じる可能性がありますので、注意してください。

   

 B借地権の活用 

T 法人の税務上の取扱い 

  同族会社においては、オーナー社長所有の土地の上に法人が建物を建てるというケースがよくあります。原則として個人が地主で法人が借主の場合、借主に借地権が移転することになり借地権の認定課税が行われます。

 

   法人所得                    法人所得

 

   個人所得 ⇒⇒⇒⇒借地権が移動⇒⇒⇒⇒ 法 人

                                 個  人

 しかし、通常の権利金を支払う場合、相当の地代を支払う場合、または無償返還届出書を地主と借主の連名で所轄税務署長に提出した場合には、借地権の認定課税は行われません。

 これらの方法をとらなかった場合には、借地権相当額(相当の地代に満たない地代を支払っているときは、実際支払っている地代との差額)について認定課税を受けることとなり、受贈益について法人税が課税されます。 

 しかし、前頁Aの場合と同様に、その借地権相当額を上回るだけの繰越欠損金があれば受贈益は欠損金と相殺され法人税は課税されないことになります。

  

U 個人税務上の取扱い  

 個人が地主である場合には、無償返還届出書の提出の有無にかかわらず、権利金を実際に受け取っていないのであれば借地権設定時には所得税の課税関係はありません。 

 所得税法第59条第1項において、譲渡所得の起因となる資産を法人に無償で移転した場合または時価の2分の1未満で譲渡した場合には、そのときの時価で資産の譲渡があったものとみなして譲渡所得の課税を行うこととしていますが、新たに借地権を設定することは資産の移転には該当しませんので、課税されないことになります。 

 

 Cま と め 

 債務免除益や受贈益もそれを上回るだけの繰越欠損金があれば法人税の負担を回避できますが、同族会社の場合には留保金課税等の問題がありますので、事前の対策が必要となります。

 

相続税対策(応用編)…その3

14  事業用建物を同族会社へ売却  

 

   @概 要 

 個人保有の不動産を同族会社に譲渡することにより、所得税、相続税の軽減を図るという方法があります。

 

   A個人の所得、財産の分散   ?? 

 例えば賃貸不動産の場合、建物建築当初は減価償却費や銀行蝋借入に係る支払利息も高額であるため、不動産所得に係る必要経費も多額に計上できますが、減価償却や銀行借入の返済も終了に近づくと、必要経費と認められる項目も減少し不動産所得が増え結果的に所得税の負担が増加します。 

 そこで、個人と法人で所得を分散し個人の所得税を軽減させるため、土地・建物を同族会社に譲渡するという方法があります。 

 ただし、土地・建物を譲渡すると所得税の負担も過大になることから、建物のみを譲渡する方法もあります。この場合、無償返還に関する届出書を税務署長に提出するなど借地権の認定課税を受けないよう配慮することが重要です。

 

   B相続税対策     ?r?? 

 不動産、特に含み益を抱えている不動産については、個人よりも法人が所有していた方が有利となる場合があります。 

 個人が所有している不動産については相続開始時の価格で評価します。一方、法人が所得している不動産についてはその法人の資産に含まれているため、結果的にその法人の株価として評価されることになりますが、取引相場のない法人の株価を評価する際に使用する純資産価額方式では、会社の資産を時価で評価するものの、時価と帳簿価額との差額(評価差額)の法人税額相当額(42%)については株価評価上控除することとなるため、その分財産の価額をおさえることができます。 

 また、土地を個人が所有し建物を同族会社が保有しているような場合、その土地につき相続の際に特定同族会社事業用宅地等として小規模宅地等の減額の規定を受けることができる可能性もあります。この場合、その土地につき地積400,2の範囲内で時価の100分の20で評価することができます。 

 ただし、個人が法人に対し使用貸借で土地を貸し付けていた場合には小規模宅地等の減額の規定の要件を満たしませんし、またその法人の事業が不動産貸付業である場合には、特定同族会社事業用宅地等の満たさないことになりますので注意が必要です。 

 なお、特定同族会社事業用宅地等の要件は以下のとおりです。      ?? 

   Tその法人に被相続人が土地または家屋を相当の対価で継続的に貸し付けていたこと。

  Uその法人の相続開始直前における被相続人その他一定の者の持株割合が50%超であること(=特定同族会社)。

  Vその法人の事業が不動産貸付業等以外であること。

  Wその宅地を取得した被相続人の親族が、申告期限においてその法人の役員であること。

   Xその宅地を取得した被相続人の親族が$相続開始時から申告期限まで引き続きその土地を所有していること。

  Yその土地を申告期限まで引き続きその法人の事業の用に供していること。

   このように特定同族会社事業用宅地等の要件は非常に厳しいものとなっていますので、この規定の適用を受けたい場合には事前の対策が必要となります。 

   特に貸付けの形態や法人の事業内容を要件としていることから、貸付け当初より検討する必要があります。