Q22 遺言書   

遺言書には、いくつかの種類があると聞きましたが、それぞれの特徴と作成方法について教えてください。

  A

 遺言書には次の3種類があります。

 遺言書の種類 

 自筆証書遺言 

 公正証書遺言 

 秘密証書遺言 

 作成方法 

 遺言者が遺言の全文、日付、氏名を自署し、押印する方法(ワープロや代筆は無効) 

 証人2人以上の立会いのもと、公証人が遺言者の口述を筆記して作成する方法 

 遺言者が署名・押印した遺言書を封筒に入れ、同じ印で封印し、公証人、証人2人以上の前に提出し、自己の遺言であることを証明してもらう方法(ワープロ・代筆可能ですが、署名は必ず自署)

 印鑑

 認印で可

 遺言者は実印証人は認印で可

 認印で可

 遺言書の保管

 遺言者が保管

 原本は公証人役場に保管され、遺言者には正本と謄本が交付される

 遺言者が保管する

家庭裁判所の検認

 必要

 不要

 必要

 特色

 遺言書の内容・孫在を秘密にでき、作成が簡単で費用もかかりません。しかし、変造、隠匿や紛失のおそれがあり、要件不備による無効や紛争の恐れもあります。

 変造、紛失の恐れがなく、また、無効になる恐れもない最も確実な遺言です。ただ、遺言の内容が証人や公証人に知れることになり、また、若干の費用がかかります。

 遺言の存在は証人や公証人に知れますが、内容は秘密にできます。しかし、内容について公証人はチェックしていないので無効や紛争の恐れがあり、また、若干の費用がかかります。

上記3種類の遺言には、その種類による効力の優劣はありません。遺言者の死亡した時点にもっとも近い日付にて作成された遺言が効力をもつことになります。ただし、作成日が異なる2通以上の遺言であっても異なる事項についての内容であれば、どの遺言も有効です。たとえば、最初の遺言で「預貯金は妻に相続させる」となっており、2番目の遺言で「土地建物は長男に相続させる」となっておれば2通とも効力をもつことになります。

 【参考】とくに遺言を残しておいたほうがよい場合

  1.遺産分割協議でもめないよう、スムーズに手続きさせたい。
  2.子供がいない場合、財産のすべてを妻に相続させたい。
  3.障害をもつ子供に重点的に配分したい。
  4.事業を承継する子供に事業用の土地・自社株を相続させたい。
  5.相続権のない孫や兄弟に遺贈したい。
  6.妻も子供もいないので、世話をしてくれた人に遺贈したい。
  7.世話になった長男の嫁に財産の一部を遺贈したい。
  8.内縁の妻・認知した子供がいる。
  9.財産の一部を公益事業に寄付したい。 

                自筆証書遺言の例

         遺言書

 遺言者○○○○は、この遺言書により左のとおり遺言する。

                      

 一、  私の所有に係る左記不動産は、建物内の家具・什器等一切とともに、妻○○○(昭和○○年○○月○○日生)に相続させる。

  (一)    愛知県日進市○○一丁目一番宅地 四〇〇・〇〇平方メートル
  (二)    同所同番地家屋番号 一番鉄筋コンクリート陸屋根二階建居宅一棟
  床面積 二〇〇・〇〇平方メートル

 

 二、  私の所有に係る株式会社○○銀行○○支店の○○○○名義の普通預金一、五〇〇万円は、妻○○○に相続させる。

 

 三、  私の所有に係る○○○○株式会社の株式五万株は長男○○(昭和○○年○○月○○日生)に相続させる。

 

 四、  愛知県日進市○○一丁目一番一号、行政書士○○○○を遺言執行者に指定する。

 

         令和○○年○○月○○日

    愛知県日進市○○一丁目一番一号

    遺言者 ○○○○ 

   昭和○○年○○月○○日生 

                                           ( ※形式は横書きでも縦書きでも問わない)


        遺言書作成の留意事項

.あらかじめ財産目録を作っておき、遺言書に記載する財産にもれのないようにします。

.贈りたい人を箇条書きに挙げます。

.具体的にどの財産を誰に残すのか、その配分を考えます。その際に注意点は次のようなものです。

(1)自社株・事業用資産は事業承継者を中心に相続させる。
(2)分割が難しい不動産は事前に分筆しておくことも必要。
(3)不動産の共有名義はできるだけ避ける。
(4)二次相続を考えたものにする。
(5)高齢の妻の一人暮らしに配慮した内容とする。

 たとえば、現在の自宅を相続させるとともに、年金だけでなく、預貯金を相続させるようにする。また、妻の介護を遺言で依頼しておくことなど。

.遺言書は死後できるだけ早くその存在が見つかるようにしておきます。したがって生 前に「相続が発生した場合は、遺言書は遺言執行者の○○○○に保管してもらっている ので、すぐに連絡をとるように」、などと相続人に伝えておくことが必要です。

.遺言は必ず書面にしなければならないので、テープやCDに録音したようなものは遺言として認められません。

.文字が書けなかったり、話すことができなかったりすると遺言は作成できません。も し、意思能力に後々疑問が生ずる恐れがある場合は、遺言者作成日の医師の診断書を用意しましょう。

.遺言書の記載内容については次の点に注意しましょう。

(1)各相続人に相続させる財産は具体的に書くこと。  

  例えば、○○○○に財産の2分の1、○○○○に財産の4分の1、などと書いた場は、相続人間のトラブルを招く恐れがある。

(2)遺留分を侵害する内容の遺言を書く場合、トラブルを招く可能性が高いので遺留分 の減殺請求があることを想定し、その手当をしておく。  

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