相続税対策(基礎編)…その3

9  相続時精算課税制度の有効活用 

 

 @適用要件

 相続時精算課税制度は、贈与をする年の1月1日において65歳以上である者(以下「特定贈与者」という)から、贈与者の推定相続人である直系卑属のうち、贈与を受ける年の1月1日において20歳以上の者(以下「精算課税適用者」という)に贈与を行った場合に適用が可能となります(なお、住宅取得等資金の場合贈与者には年齢の制限はありません)。

 相続時精算課税制度の適用を受けようとする精算課税適用者は、贈与を受けた財産に係る贈与税の申告期限内に「相続時精算課税選択届出書」等を贈与税の申告書に添付し、贈与税の納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。

 この「相続時精算課税選択届出書」を提出した場合には、その届出書に記載した特定贈与者からの贈与により取得する財産については、この制度を適用した年分以降、全て相続時精算課税が適用されることとなります。なお、いったん提出された「相続時精算課税選択届出書」は撤回することはできませんので注意が必要です。

 

 贈 与 ふくろ → 相続時精算課税選択届出書」

           「相続時精算課税に係る財産を

           贈与した旨の確認書」の提出

     
  A基本的な仕組み

 

 T 財産の贈与時 

 

 相続時精算課税制度は、贈与する財産の種類に制限はなく、金額の上限も設けられていません。また、贈与の回数にも制限が設けられていませんので、一括あるいは数年間にわたる贈与も可能となります。ただし、無税での移転ができる金額は2,500万円(住宅取得等資金の場合には3,500万円) の制限があり、この金額を超えた部分については一律で20%の贈与税が課税されます。

 相続時精算課税制度に係る贈与税額の計算

   (贈与税の課税価格−特別控除額※)×20%=贈与税額 

             ※特別控除額は以下の金額のうちいずれか少ない金額となります 

・2,500万円(既にこの規定の適用を受けて控除した金額がある場合には、その金額を控除した残額) 

・特定贈与者ごとの贈与税の課税価格 

 

 U 相続発生時

 

 特定贈与者から相続または遺贈により財産を取得した精算課税適用者の相続税の計算については、相続時精算課税制度を選択した年分以後の年に特定贈与者から贈与を受けた財産の「贈与時における価額」と相続財産の価額を合算した価額を相続税の課税価格とし、現行の課税方式により計算した相続税額から、相続時精算課税制度における 贈与税の税額に相当する金額を控除します。

 その際、相続税額から控除しきれない贈与 税の税額に相当する金額については、還付を受けることができます。

 左斜め下 控除  

     相続税額
  

 B自社株の場合の相続時精算課税制度適用上の留意事項 

                      (評価額の増減の考慮)

 相続時精算課税制度を活用した場合、2,500万円までであれば贈与税の負担なく自社 株を後継者に移転させることができるため、経営権を後継者にバトンタッチできます。

 ただし、相続時精算課税制度を適用した場合には、前述したように、相続税の課税価格を算出する際に、相続時精算課税制度を適用したことにより贈与税の課税価格に算入された価額を合算することとなり、その際に合算される贈与財.産の価額は、「贈与時点における課税価格に算入された価額」となるので留意が必要です。 

 非上場株式の相続税または贈与税の課税価格の計算は財産評価基本通達に基づいて評価が行われ、評価額は会社の業績・規模・類似業種の平均株価等の変動や、財産評価基本通達の改正等により大きく変動するのが通常です。そのため、自社株の評価額が上昇し、相続時点の評価額が贈与時点の評価額よりも高い場合でもその差額分は相続税の課税対象とはならないため有利になります。 

 一方、自社株の評価額が下落し、相続時点の評価額の方が贈与時点の評価額よりも低い場合には、その差額分だけ相続税の課税対象が増えることとなり不利になってしまいます。このような場合には、税務上の取扱いだけを考慮すれば、そもそも相続時精算課税制度を利用しなければ良かったということになってしまいます。 

 相続時精算課税適用者が贈与後において経営成績を上昇させることを期待するような、一種のストックオプション的な考え方もありますが、自社株の相続時精算課税制度の適用にあたっては評価会社の状況等を見極めて慎重な判断が必要となります。