19  新会社法の活用    

 平成17年6月29日、会社法案が国会で可決されました。これまでは商法、有限会社法などいくつかの法律に分散されていた会社に関する規定が一本化されることに伴い、規定そのものも実質的に大幅に改正されました。特に中小企業にかかわる改正は多岐にわたり、事業継承の場面で活用できる株式制度の改正も含まれています。 

 こでは、新会社法施行前と比較して事業承継において有効活用できる規定について説明します。

 ①議決権制限株式の活用

 中小企業を経営されているオーナーの場合、将来発生する相続税に占める自社株の財産評価のウエイトが概して高い場合が考えられます。そのような場合、推定相続人が複数いると、事業の承継者は決定していても相続財産の構成上、自社株が事業承継者以外にも分散される可能性があります。 

 議決権制限株式の発行限度額の緩和等もあり、事業承継予定者が将来の株式分散による議決権拡散を防止し安定的に事業承継を行うためには議決権制限制度の活用は事業承継対策の1つとして非常に有効となります。

  議決権制限株式とは 

   議決権制限株式は株主総会において議決権を行使することができる事項を定めた種類株式の一形態です。株式は総会決議事項の全てについて議決権を有している議決権普通株式が通常ですが、議決権制限株式は、一切の事項について議決権を有しない完全無議決権株式や、一定の事項についてみ議決権を有するものがあります。

  議決権制限株式の発行限度額の緩和 

   新会社法では議決権制限株式の発行限度額について、株式譲渡制限会社とそれ以外の公開会社とでは次のように規定しています。 

 (1)公開会社

   公開会社とは、その発行する全部または一部の株式の譲渡について株式会社の承認を要する旨を定款に定めていない株式会社です。

   公開会社の議決権制限株式の数は発行済株式総数の2分の1を超えてはならないとされています。2分の1を超えた場合には会社は直ちに、議決権制限株式の数を発行済株式総数の2分の1以下にする必要があります。 

 (2)株式譲渡制限会社

   株式譲渡制限会社は公開会社以外の株式会社であり、株式の譲渡にあたっては、株式会社の承認が必要である旨を定款に定めている株式会社です。わが国の中小企業においては株式譲渡制限会社が非常に多く見られます。 

   株式譲渡制限会社の議決権制限株式の発行限度については、新会社法により公開会社のような制限はないことになりました。

  議決権制限株式の活用と留意事項  

  事例 

株式譲渡制限会社のオーナーであるAから事業後継者Bを含む

       子ども3名に株式を相続させる場合

 A(オーナー)  株式の譲渡⇒

40% B(後継者)

30% C(非後継者)

30% D(非後継者)

   問題点

  遺産分割によりB,C,Dが上記割合で株式を相続することになりました。後継者Bの持株割合は過半数を下回るため経営権の確保の点で問題があります

 対 策

  株式譲渡制限会社は新会社法による制度改正により、議決権制限株式の発行限度枠が旧商法では発行済株式総数の2分の1以下であったものが、発行限度額の制限がなくなりました。

 (1)この事例では、そのため相続開始前にあらかじめC,Dに相続させる予定の株式     (30%+30%=60%)について議決権制限株式にしておきます。      (2) Aは併せて、遺言書等によりBが普通議決権株式をC,Dが議決権制限株式を相続するよう指定することによりBの経営権が確保されます。

 

 留意事項 

  新たに議決権制限株式を発行する場合には定款の変更手続きが必要となります。相続発生後、複数の相続人に株式が分散され定款の変更手続きが困難なことも予想されるため、コントロール可能な相続開始前に定款変更を行うことが有用です

 

 ②相続人等に対する受渡し請求の活用

 

 概  要 

  旧商法等では、譲渡制限がある株式であっても、相続等により会社にとって好ましくない者に株式が分散してしまう可能性がありました。  新会社では、相続等により譲渡制限株式を取得した場合には、定款の定めにより会社は相続人等に売渡請求をすることができるようになり、株式の分散を阻止することができるようになりました。 

 

 相続人等に対する売渡請求制度の創設 

  本来、株式は自由に売買できるのが原則ですが、会社のために好ましくない者が株主になることを防止するために、定款に「株式の譲渡について会社の承認を必要とするにとを定めることができます。このような規定がある会社を「株式譲渡制限会社」といいます。

  かし、旧商法等では売買等以外の事由による株式の移転(相続や合併等)については、会社による譲渡承認の対象とすることはできず、その移転を阻止することはできませんでした。

  譲渡制限制度の趣旨は、会社のために好ましくない者が株主になることを防止することですが、相続等でも好ましくない者が株主になる可能性はありますので、相続等の売買等以外の事由による株式の移転であっても、定款に定めることにより、相続人等に対して売渡しの請求ができることになりました。

  

 売渡請求の留意点 

  この制度を利用できる会社は、譲渡制限株式を発行している会社に限られていますが、売渡請求制度を活用するには、以下の留意点があります

  (1)相続人等により自己株式を取得した者に対し、その自己株式を自社に売り渡すことができる旨を定款に定める必要があります。

    なお、定款変更は株主総会の特別決議となりますので、議決権の過半数を保有する株主が出席し、その出席株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要となります。

  (2)売渡請求の都度、株主総会の特別決議によって、次に掲げる事項を定めなければなりません。

     (ア) 売渡請求する株式の数

     (イ) 売渡請求先の氏名または名称  

  なお、相続等があったことを知った日から1年以内でないと、売渡しの請求はできません。

  (3)株式の売買価格は原則として当事者間で協議により決める必要があります。ただし、協議が調わない場合などは、会社または相続人等が、売渡請求があった日から20日以内に、裁判所に対し、売買価格の決定の申立てをすることができます。  

  なお、申立てがあった場合には、仮に申立て後に当事者間の協議が整ったとしても、裁判の決定価格が株式売買価格となります。

  (4)売渡請求があった日から20日以内に、裁判所に対し、売買価格の決定の申立てがない場合には、その期間内に当事者間の協議が調った場合を除き、売渡請求の効力は失われます。つまり会社は相続人等から自己株式を回収できないことになります。

  (5)買取金額は分配可能額以下であることを要する取得財源規制があります。 

 

具体例 

      筆頭株主A

 A法人             Bの相続人 

      少数株主B ⇒   Bの相続人

                Bの相続人 

  

 株主Bに相続が発生した場合、株式がBの相続人に分散するおそれがあります。 

 事前に定款を変更し、相続人等に対し売渡請求できるようにしておけば、株式の分散を防止でき、会社にとって好ましくない者に株式が移転することが防げます。

 

 ③期待どおりの効果を得るために 

 

 新会社法施工前は自己株式の取得の決議は定時株主総会に限定されていたため、相続税納付期限と定時株主総会のタイミンの関係で機動的対応は困難でした。 

 また、施行前は、特定の株主から取得する場合の自己株式の取得手段としては、予め会社に株式を譲渡する譲渡人を指定し、その譲渡人から直接株式を取得する相対取引のみに限定されていたため、株主総会の特別決議(総株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、かつその議決権の3分の2以上の賛成)において、次の事項を取締役等へ授権する必要がありました。 

 (1) 取得する株式の数 

 (2) 株式と引き替えに交付する金銭等の内容と総額  

 (3) 株式を取得することができる期間 

 (4) 譲渡人となる株主 

 新会社法においては、譲渡人を指定しないで自己株式の譲渡の決議が可能となったことから、この決議は普通決議(総株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、かつその議決権の過半数の賛成)で足りることになりました。 

 

  自己株式の取得の決議が定時株主総会に限定されず臨時株主総会でも可能となったことから、相続人が納税資金確保のため、相続により取得した株式を会社へ譲渡するといった手続きも、定時株主総会の時期を待たずに必要に応じた時期に臨時株主総会を開催することにより対応が可能となりました。 

 これにより相続税の納付期限にあわせて臨時株主総会を開催し、相続税納付資金を確保することも可能となりました。 

 ただし、株主へ金銭を交付して自己株式を取得することから「剰余金の分配」と考えられるため、剰余金の分配可能額を超えて自己株式の取得を行うことはできません。 

 

 

  新会社法施行前と施行後における取扱いの違いを事例により確認します。

 

 事例

  
      
・甲社の事業年度:4月1日から3月31日

        ・定期株主総会は、例年6月中旬に開催している。

     ・定時株主総会直後の7月15日にAが死亡した。 

          ・Aの死亡によりA所有の甲社株式を後継者Bが相続することになった。

              ・Bが相続した財産は、甲社株式のみであったため、相続税納税資金は甲

         社株式を甲社へ譲渡して調達する方法を検討した。

(相続人相関図)  

   A:甲社オーナー  ⇒    B:後継者 

                        C:非後継者

                             D:非後継者 

 

  新会社法施行前は、定時株主総会でなければ自己株式の取得の決議ができなかったため、相続税の納付期限である5月15日までに

(1) 定時株主総会を開催して自己株式取得の決議をする。  

(2) 取締役等が取得株数、申込期日等を決定する。   

(3) Bより自己株式を取得する。

 等の事項を、段階を経て実行することは日程等を勘案した場合、事実上困難であった。

 (新会社法施行前)

    ←       事 業 年 度  →               

                   ←  10か月            →    

1/1   4/1   6/中旬 7/15     1/1   3/31  5/15  6/中旬     1/1

←      ×     × ×        ×   × ×          → 
                 相続開始           定時株式総会

      定時株式総会            相続税申告 

                     納付期限

  新会社法施行後は、臨時株主総会においても自己株式の取得の決議が可能となったため、相続税の納付期限である5月15日までに自己株式の取得手続きが完了されるスケジュールで臨時株主総会を開催することにより、自己株式による納税資金の機動的調達が可能となった。  

(新会社法施行後)

    ←       事 業 年 度    →           

           ←  10か月         →  

      4/1   6/中旬 7/15             3/31     5/15    

←    ×     ×  ×          ×     ×    →   

         相続開始          相続税申告

定時株式総会自己株式取得の実行納付期限

                

                 Bより申し込み

                  ↑

                 株主へ通知

                  ↑

                 取締役等の決議

                  ↑ 

                 臨時株主総会

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