20  生命保険等の活用による対策    

  ①生命保険・退職金の活用 

 経営者が死亡し相続が発生したが相続税の納税ができない場合には、事業用資産の売却に追い込まれ事業の縮小を余儀なくされたり、最悪の場合には事業を継続していくことが困難な場合もあります。  そのような事態にならないよう、円滑な事業承継を行うためには、生前から計画的な納税資金対策を検討しておくことが重要です。 

  相続税の納税方法  

 相続税の納税方法は金銭による一括納付が大原則です。  所得税や法人税の場合には所得(金銭的な裏付けのある果実)に対する課税であるため、資金繰りを誤らなければ基本的には納税が可能です。一方、相続税は取得した財産に対する課税であり、取得した財産のほとんどが被相続人が経営していた同族会社の株式や農地、宅地等である場合には、資金化ができず、また、仮に資金化できたとしても相当の期間を要する場合も考えられます。 

 そこで、相続税独自の納付方法として「延納」と「物納」という制度が認められています。 

金銭一時納付が困難な場合には最長20年の「延納」が、それでも困難な場合には「物納」が認められます。

  大原則 金銭一時納付   
     ↓相続開始から10カ月以内に一時納付が困難な場合
  特 例  延     期  
     ↓最長20年の延納によっても納付が困難な場合
 特例の特例  物     納  
 上記のように納付方法には「金銭一時納付」「延納」「物納」の3つの方法がありますが、ここでは「金銭一時納付」をするための生命保険による納税対策をご紹介します。

  生命保険による納税対策  

 被保険者の死亡により、生命保険会社から支払われる生命保険金を相続税の納税資金の一部とする対策です。  

 「500万円×法定相続人の数」相当額が、相続税が非課税となるため、無税で「500万円×法定相続人の数」相当額を手にすることができます。そのため、少なくとも、生命保険金の非課税の範囲分の生命保険金を相続人が手にできるような手当ては必要でしょう。

  退職金による納税対策  

 会社から相続人へ支払われる死亡退職金を相続税の納税資金の一部とする対策です 

 日本の中小企業の多くは、経営者が突然死亡した場合、相応額の死亡退職金を経営者の相続人に一時に支払うことは資金繰り上、困難な場合が多いのではないでしょうか。 

 そこで考えられるのが生命保険金を利用して経営者へ死亡退職金を支払う方法です。会社が保険契約者となり、被保険者を経営者、保険金受取人・保険料負担者を会社とする生命保険に加入します。 

 将来、経営者が死亡した場合には会社に生命保険金が支払われ、その保険金を原資として、会社は相続人に死亡退職金を支払います。相続人はその退職金により相続税の納付を行うというものです。

 

  ①保険料の支払い

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生命保険

会  社 

 一定の保険であれば

   損金

 会社

 ③死亡退職金の支払い

     →→→→

後継者   納税
 

  →→→→

 ②保険料の支払い

 

 「500万円×法定支払人

 の数」は非課税

   

この手法を活用することにより、相続人、会社の両者に次のメリットが掲げられます。

メリット

【・相続人に退職金として支給されることにより、「500万円×法定相続人の数」が非課税とされる

ため、相続税が課税されることなく、「500万円×法定相続人の数」分の資金を手にすることができる。    

 ・一定の定期保険であれば原則として支払保険料が会社の損金となるため、法人税等の負担が軽減さ

れる。】

 生命保険には、「貯蓄性」のあるものと「掛捨て」といわれるものがあります。 

 経営者が死亡した際受け取る保険金は同額であっても、中途で保険契約を解約した場合、一定の解約返戻金を受け取ることができる保険と解約返戻金がゼロの保険等、生命保険と一口に言っても保障される範囲、内容、保険料等さまざまな種類の契約があります。加入にあたっては、どのような事項に重点をおくのか、会社の状況、保険加入の目的等を十分に検討した上で選択することが重要です。 

 

 ②生命保険の活用方法 

  概  要  

 法人が自社の福利厚生目的等で保険を利用するというケースはよくありますが、事業承継の対策としても保険を活用することができます。例えば、オーナー社長に対する退職金の準備としての保険の活用や、損金性の高い保険加入により利益の繰延べを図り自社株の評価額を引き下げるという効果も期待できます。 

 ただし、保険といっても色々と種類があり、その種類によって会計上、税務上の処理が異なりますし、またその効果も異なるため、保険契約を締結するにあたっては、その目的によってどの保険に加入すべきか検討する必要もあります。

 

  具体的検討  

 法人が加入する保険には保険料の全額が損金となるものとそうでないものとがあります。主な商品として定期保険、養老保険、がん保険等がありますが、ここでは退職金プランとしてよく利用される定期保険について説明します。 

 定期保険とは、一定期間内に被保険者が死亡した場合にのみ保険金が支払われる生命保険をいいます。また、役員等の生前退職や死亡保障をカバーするのに多く用いられている長期平準定期保険や逓増定期保険も定期保険ですが、これらはそれぞれ個別の取扱いがあり、一般の定期保険と取扱いが異なります。  一般の定期保険の場合は、養老保険と異なり満期返戻金や配当金がないことから、その支払保険料については、原則として資産に計上する必要はなく、その支払時に全額を損金の額に算入することとされています。 

 一方、定期保険といっても、保険期間が長期に設定されている場合には.年を経るに従って保険事故発生率が高くなるため、本来、保険料は年を経るに従って高額になりますが、実際の支払保険料は、その長期の保険期間にわたって平準化して算定されることから、保険期間の前半において支払う保険料の中に相当多額の前払保険料が含まれることとなります(長期平準定期保険)。そこで、長期平準定期保険の保険料については、全額は損金算入を認めず一定金額を前払保険料等として資産計上することとされています。 

 同様に逓増定期保険とは瀞保険料は変わらずに年々保険金だけが単利または複利の一定の割合で逓増していく定期保険をいいます。保険料は割高ですが、貯蓄性・保障性とも高く、役員や従業員の死亡退職金や弔慰金だけでなく、通常の生前退職金の準備にも利用することができます。この逓増定期保険の保険料についても、支払時には全額は損金算入が認められていません。

 保険料の資産計上額をまとめると、次頁のとおりとなります。

 

  区  分

 

  前払期間

 

 資産計上額

 

長期平準

定期保険

 保険期間満了時における被保険者の年齢が70歳を超え、かつ、当該保険への加入時における被保険者の年齢に保険期間の2倍に相当する数を加えた数が105を超えるもの

 保険期間の開始時から当該保険期間の60%に相当する期間

 支払保険料の2分の1に相当する金額

逓  増

定期保険

 (1) 保険期間満了時における被保険者の年齢が60歳を超え、かつ、当該保険への加入時における被保険者の年齢に保険期間の2倍に相当する数を加えた数が90を超えるもの[(2),(3)を除く] 

 保険期間の開始時から当該保険期間の60%に相当する期間

 支払保険料の2分の1に相当する金額

 

 (2) 保険期間満了時における被保険者の年齢が70歳を超え、かつ、当該保険への加入時における被保険者の年齢に保険期間の2倍に相当する数を加えた数が105を超えるもの[(3)を除く]

同上

 支払保険料の3分の2に相当する金額

 

 (3) 保険期間満了時における被保険者の年齢が80歳を超え、かつ、当該保険への加入時における被保険者の年齢に保険期間の2倍に相当する数を加えた数が120を超えるもの

同上

 支払保険料の4分のBに相当する金額

 従業員、特に役員に対する退職金の場合、死亡退職金にしても生前退職金にしても多額になると考えられますので、常にその資金を確保しておく必要があります。その点でも長期平準定期保険等は支払保険料の一定額が損金算入でき、死亡退職金だけではなく解約払戻金を利用することにより生前退職金の備えとしても有効に活用できるものと考えられます。特にオーナー社長の場合、自らの退職金の備えとして損金性のある定期保険を活用することは事業継承にとっても有効な対策となります。 

 なお、社長を含めた役員に対して退職金や弔慰金を支払う場合には、役員退職金支給規程や役員弔慰金支給規程等を整備しておく必要があります。 

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